恋媛百華繚乱

恋華・4

■side:E■


アルの話を結局してしまった。
彼には話したくなかったのに。
話してしまったら今度こそ対等でいられなくなりそうで。
研究の論争でついてこられるのは彼しかいなくて、どんなに避けてても話す機会は増えるばかり。
別々にやっていては効率があまりにも悪くて結局同じ下宿で生活をし、暇があればいろいろと討論を重ねる。
そんな中、いつしか心の中に張り巡らせたバリケードは取り除かれてしまって。
育ってきた環境が違うところ以外、基本的な考え方の癖みたいなものまでハイデリヒはアルにそっくりで。
時折錯覚しそうになる。
幸か不幸か、この年のアルを知らないから多分同一視せずに済んでいるんだろう。
生身では十歳のアルまでしか知らないのだから。
それでも時折アルが年相応に育っていたら、と思ってしまう心を止められない。

アル。
アル。
早くお前に逢いたいよ。
心が揺らいでしまう前に。


■side:A■


ここのところの姉さんの僕を呼ぶ声に切実さが混じり始めてきた。
焦っているのか。
それとも・・・・?

早く・・・早く僕と姉さんを繋ぐ扉を見つけなければ僕は今度こそ姉さんを永久に失ってしまいそうだ。
誰にも代わりなど務められないただ一人の人。
大切な大切な姉さんを。


■Side:H■


エドに告白した。

異世界にいるという彼女の最愛の弟に瓜二つだという僕からの告白をエドは必死になって聞かない振りをしようとした。
その素振りに逆に可能性を見出した僕はエドへの想いを包み隠さず伝えようとした。
少しは僕のことを意識してくれていると信じて。

共に過ごしていきたい。
対等以上に論じ合える存在と一緒に歩んで行きたい。
この不穏な時代を一人で歩いていくのは余りにもつらく淋しいから。


■side:E■


一生懸命避け続けてきた話。
好きだと告げてきたハイデリヒ。
錯覚だと退けようとしたそれが蜘蛛の糸のように絡み付いてくる。
疲れきった心が妥協したがり始めてる。
同じ存在であるはずがないのに・・・同じ存在だと錯覚してしまいそうになる。
あまりにも二人のアルフォンスは似過ぎていて。
近くの存在にすがってしまいそうだ。

アル・・・・・アル。
早く・・・早く捕まえてくれ。
間に合わなくなる前に。
彼を選んでしまう前に。

早く・・・・!


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